生産管理は、止まったときの影響が最も大きい業務のひとつです。担当者が休んだ日に、その日何を作るかが決まらない——そういう状態は珍しくありません。この記事では、生産管理の何が引き継げていないのかを分解し、1日しのげる形にするところから整理します。
引き継げていないのは、計画そのものではない
生産計画の表は、たいてい共有されています。引き継げていないのは、その表をどう作ったかです。
- 流す順番を決めた理由:段取り替えを減らすためか、納期が近いからか、材料が来ているからか
- 後回しにしてよい判断:どの客先なら待たせても影響が小さいか
- どこまで前倒しできるか:在庫として持てる範囲
- 特急が入ったときの入れ替え方:何を、どこまでずらすか
この4つが本人の頭の中にある限り、表を共有しても代われません。表は結果であって、判断ではないからです。
止まる場面は、だいたい決まっている
生産管理が属人化していると、次の場面で必ず止まります。
- 特急・割り込みが入ったとき:何を後ろにずらすかの判断
- 材料や部品が遅れたとき:組み替えるか、待つか
- 設備が止まったとき:別の機械に振るか、外注に出すか
- 担当者が休んだとき:その日の指示が出ない
逆に言えば、この4場面の判断だけ書き出せば、かなりの部分が代われます。全部を引き継ぐ必要はありません。
まず「1日しのげる」形にする
完璧な代替者を作ろうとすると、いつまでも終わりません。目標を下げてください。担当者が1日休んでも、その日が回る——ここまでで十分に価値があります。
- 翌日ぶんの計画を、前日のうちに出す:これだけで1日の猶予が生まれます。運用を変えるだけで、費用はゼロです。
- 「計画どおりにいかないとき」の優先順位を紙1枚にする:「納期が今週のものを優先」「◯◯社は前倒し不可」など、5〜10行で足ります。
- 誰に聞けばよいかを書いておく:材料は購買の誰、設備は保全の誰、客先の交渉は営業の誰。連絡先が分からずに止まることが実際に多くあります。
判断を表にする
上の4場面について、条件と対応をセットで書きます。判断表の形です。
- 条件:特急が入った(納期3日以内)
- 対応:段取りが同じ品番の後ろに差し込む。ずらすのは納期に2週間以上余裕があるものから
- 理由:段取り替えを増やすと全体の時間が伸びるため
理由を書くのがコツです。理由があると、表にない状況でも応用が利きます。理由のない表は、書いてある場面でしか使えません。
システムを入れる前に
生産管理システムは、納期の逆算・在庫の計算・進捗の可視化を速くします。ただし「何を優先するか」の判断は入りません。
判断が1人に張りついたまま導入すると、その人が休んだ日はやはり止まります。順番は、判断を書き出すのが先、システムは後です。詳しくはDXの前にやることにまとめました。
「うちは特殊だから」への答え
生産管理の担当者からよく出る言葉です。実際、条件は会社ごとに違います。
ただし特殊なのは条件であって、判断の構造ではありません。「何を優先し、何を後回しにするか」という形は同じです。だから、特殊であるほどその会社の判断基準を書き出す価値が上がります。汎用の手順書では代替できないからこそ、自社の判断表が要ります。
何から始めるか
- 過去1か月で、計画を組み替えた場面を3件挙げてもらう
- 各件について「何を見て、どう決めたか」を聞く:聞き方はこちら
- 条件・対応・理由の3列にする
- 翌日ぶんの計画を前日に出す運用に変える
- 次に組み替えが起きたら、その日に1行足す
まとめ
- 引き継げていないのは計画表ではなく、順番を決めた理由・後回しの判断・前倒しの範囲・特急の入れ替え方。
- 止まる場面は4つ。特急/材料遅れ/設備停止/担当者の休み。ここだけ書き出せば大部分が代われる。
- まず「1日しのげる」を目標にする。翌日ぶんを前日に出すだけで猶予が生まれる。
- 判断表には理由を必ず書く。理由があると、表にない状況にも応用できる。
- システムは判断を決めない。書き出すのが先、導入は後。
「担当者が休むと止まる」状態なら、翌日ぶんの段取りを前日に出しておくだけでも、1日しのぐ猶予ができます。4つの場面を書き出すときの表の形は、判断表の見本で確かめられます。