業務改善は、やり方より「どこまでやるか」を先に決められるかで結果が変わります。範囲を広く取ると調整に時間が消え、日常業務に押し戻されて終わります。この記事では、中小製造業が一人でも進められる範囲の切り方と、5ステップの進め方を整理します。
まず、範囲を1業務・1か月に切る
「全社の業務改善」「部署の効率化」で始めたものは、たいてい終わりません。理由は3つです。
- 関係者が増える:調整の時間が実作業を上回ります。
- 効果が見えるまでが遠い:途中で関心が切れます。
- 日常業務に負ける:忙しくなった週に、真っ先に後回しになります。
対象は1業務、期間は1か月。この大きさなら、一人でも終わらせられます。1つ終わると型ができ、2つ目からは速くなります。
どの業務を選ぶか
選び方を間違えると、労力のわりに何も変わりません。次の基準で選んでください。
- ◎ 代われる人がいなくて、止まると影響が大きい:最優先。ここが会社のリスクそのものです
- ○ 同じ質問が繰り返し来ている:書き残せばすぐ効果が出ます
- ○ 手戻りが頻発している:原因が特定しやすく、直せば数字に出ます
- △ 頻度は高いが、誰でもできる:効率化の余地はあっても、リスクは低い。後回しでよい
- × 現場が困っていない:反対されて終わります
進め方の5ステップ
- いまのやり方を見える形にする(1週目)
担当者に、実際にやっている順に話してもらいます。書いてもらうと「当たり前すぎる工程」が抜けます。各工程に時間・頻度・判断を付けてください。方法は業務の可視化のやり方に。 - 止まっている箇所を特定する(1週目後半)
待ち時間、確認のための往復、手戻り。作業そのものより、その間の待ちが大きいことがほとんどです。 - 直す箇所を1つだけ決める(2週目)
複数を同時に変えると、何が効いたか分からなくなります。1つです。 - やってみて、記録する(3週目)
変える前と後を比べられるように、変える前の状態をメモしておきます。 - 形にして残す(4週目)
直したやり方を、手順・判断表・チェックリストのどれかにします。ここをやらないと、担当が代わった瞬間に元に戻ります。
「改善」と言わないほうがうまくいく
改善という言葉は、いまのやり方が悪いという含みを持ちます。現場が身構えると、実態を話してもらえません。
入り口は困りごとにしてください。
- 「◯◯さんが休んだときに困ることって、何ですか」
- 「毎回聞かれて面倒なことって、ありますか」
- 「これ、二度手間やなと思うことは」
困りごとが出てこない業務は、対象にしないでください。改善の余地があっても、動機がないものは続きません。
効果の測り方
作業時間の削減額を試算すると、前提の置き方で数字が動き、かえって信用されません。数えやすく、意味も伝わるのはこの3つです。
- その業務ができる人が、何人になったか(1人 → 2人が最大の成果)
- 担当者への質問が、何件減ったか(1週間ぶん数えるだけ)
- 手戻りが、何件減ったか
特に1つ目です。「できる人が2人になった」は、時間の削減より会社にとって価値があります。
元に戻らないようにする
改善が元に戻る原因は、ほぼ1つです。新しいやり方が形になっていないこと。口頭で共有しただけだと、担当が代わった時点で消えます。
最後の1週間で、必ず次のどれかに落としてください。
- 手順書(やり方が一本道の場合)
- 判断表(条件で対応が変わる場合)
- チェックリスト(抜け漏れを防ぎたい場合)
そして更新の担当を決めること。決めていないものは、1年で古くなります。方法はマニュアルの更新ルールに。
まとめ
- 範囲は1業務・1か月に切る。全社や部署単位で始めたものは終わらない。
- 選ぶのは「代われる人がいなくて、止まると影響が大きい」業務。現場が困っていないものは選ばない。
- 5ステップ。見える形にする → 止まっている箇所を特定 → 直すのは1つだけ → やって記録 → 形にして残す。
- 「改善」ではなく「困りごと」から入る。
- 効果は時間の試算より、できる人の数・質問の件数・手戻りの件数で測る。
- 形にして更新担当を決めないと、元に戻る。
「どの業務から手を付けるか」の選定と、最後に形として残すところまでご一緒します。まずは15分の適合確認から。