「5万円払うと、結局何が手に入るのか」——これが分からないと、依頼のしようがないと思います。だから、実際にお渡しするものを、そのまま公開します。
題材にしたのは、私が水処理・産業設備の技術営業として、実際に何度も見てきた状況です。「上司が出張だと見積が出せない」「若手が現地に行っても、持ち帰った情報では組めない」——これは私自身が当事者として経験してきたことで、ここに並べた質問も判断の観点も、私が実務で使っていたものです。
守秘義務があるため特定の企業名や実在の案件は出しませんが、御社に対しても、これと同じものをお作りします。
再現した会社の状況
- 水処理装置の製造・据付 従業員48名
- 受注生産型。図面をもらってから、装置本体・配管・据付・試運転まで一式で見積もる
- 営業部長(勤続26年)が来年3月で退職。見積が事実上この人しか出せない
- 若手が現地調査に行っても、持ち帰った情報では見積が組めず、結局部長に戻る
対象業務は「見積作成」1つに絞りました。診断では常に1業務に絞ります。複数挙がった場合は「その人が明日から来なくなったとき、一番困るのはどれか」で決めます。
【1】診断で使う質問リスト(全文)
隠す理由がないので、そのまま出します。この順番で聞きます。
ステップ1:業務の輪郭をつかむ(15分)
- この業務は、誰のために、何が達成できれば終わりですか
- 1か月に何件くらい発生しますか。繁忙期はいつですか
- いま、この業務ができる人は何人いますか
- その人が3日休んだら、何が止まりますか。1か月休んだらどうなりますか
- 過去に、この業務が原因でトラブルになったことはありますか
ステップ2:通常の手順を追う(45分)
- 引合が来てから見積を出すまで、やることを順番に教えてください
- それぞれ、どのくらい時間がかかりますか
- 使っている資料・システム・帳票は何ですか。どこにありますか
- 途中で他の人に頼む工程はありますか。誰に、何を頼みますか
- その順番でやる理由はありますか。順番を変えると何が起きますか
ステップ3:判断を引き出す(60分・ここが本番)
- 図面を見て、最初に確認するのはどこですか。なぜそこですか
- これは確認しないと見積を出せない、という項目は何ですか
- 「この条件なら進める/この条件なら止めて確認する」の線引きはありますか
- 技術部門に相談するのは、どういうときですか
- 値引きを受けてよい上限はありますか。誰の承認が要りますか
- 「これは危ない案件だ」と感じるのは、どういうときですか。何を見てそう思いますか
ステップ4:例外を掘り起こす(45分)
- 直近1年で、想定外のことが起きた案件を3件教えてください
- そのとき何が起きて、何を見て、どう対処しましたか
- その判断は、誰かに相談しましたか。しなかったならなぜですか
- 結果はどうなりましたか。次に同じことが起きたら、同じ対処をしますか
- 過去に失注した案件で、理由が分かっているものはありますか
ステップ5:周辺を押さえる(30分)
- この業務で関わる社内の人、社外の人を教えてください
- それぞれ、何を聞くときに連絡しますか。不在時の代わりは誰ですか
- 資料はどこに保管していますか。個人のPCの中にあるものはありますか
- 締切や周期が決まっているものはありますか
- 後任の人に「これだけは伝えたい」ということは何ですか
計26問・約3時間半です。この後、実際の作業を横で拝見し、聞いた内容と食い違う箇所を確認します。本人が「当たり前すぎて言わなかったこと」は、たいていここで出てきます。
【2】判断表のサンプル
ステップ3・4で引き出した内容を、この形にします。手順書に書きにくい「進める/止める」の線引きを、条件のかたちで残すためのものです。
見積作成|判断表(抜粋)
※ 表は横にスクロールできます
| 場面 | 見るところ | この条件なら進める | この条件なら止めて確認 | 誰に |
|---|---|---|---|---|
| 搬入経路 | 通路幅・段差・建屋の開口 | 通路幅が装置幅+600mm以上あり、段差なし | 幅が装置幅+600mm未満/段差あり/2階以上 →レッカー要否の判断が必要 | 工事担当 |
| 既設との取り合い | 既設配管の位置・口径・材質 | 現地写真と図面の両方があり、口径が一致 | 写真のみ/図面が古い/材質不明 →現地確認せずに見積を出さない | 技術部 |
| 工事範囲 | どこからどこまでが自社工事か | 客先の書面に範囲の記載がある | 口頭のみ/「一式」としか書かれていない →範囲を文書で確認してから出す | 営業部長 |
| 試運転・立会い | 日数・人数・客先の立会い有無 | 1日・2名以内で収まる見込み | 複数日/夜間・休日/客先立会いが複数回 →工数を再計算 | 工事担当 |
| 値引き要請 | 要請額と粗利率 | 粗利率が社内基準を上回る範囲 | 基準を下回る/追加値引きの要請 →独断で受けない | 営業部長 |
※ 数値(600mm、日数、人数など)は、説明のために置いた目安です。実際の診断では、御社のベテランが使っている基準を、そのまま数値に置き換えます。ここを一般論で埋めないことが、この作業のすべてです。
判断表の作り方そのものは「判断表」の作り方で公開しています。
【3】診断報告書の見本(抜粋)
A4で10〜15ページ程度になります。構成と、実際の書きぶりを一部お見せします。
1. 対象業務と、いまの状態
- 対象:見積作成(引合受領〜見積提出)
- 実行できる人:営業部長1名(他3名は部分的に可)
- 発生頻度:月12〜18件
- 本人不在時:3日で提出遅延が発生、2週間で失注リスク
2. 何が引き継げていないか
ヒアリングと実作業の確認から、引き継げていない要素を3つに分けて整理しました。
- 手順は7割が引き継げる状態|見積システムの操作、書式、提出フローは既存資料でほぼ足りる
- 確認項目が外に出ていない|図面を見て何を確認するかが、部長の頭の中にのみ存在。若手が現地で聞き漏らす原因
- 判断の線引きが不在|「この条件なら止めて確認」の基準がなく、若手が推測で数字を入れる余地がある
つまり、止まっている原因は見積の計算能力ではなく、その手前の確認と判断です。ここは経験の浅い担当者でも、リスト化すれば今日から使えます。
3. 優先順位(30日で何から着手するか)
- 見積前の確認項目を質問票1枚にする|最も損害が大きく、最も具体的に書ける。所要3〜5日
- 判断表を作る|上の5場面を条件で書き出す。所要5〜7日
- 過去見積の備考を、判断の記録として書き直す型を決める|次の担当が前提を読める状態にする
- 若手1名に実案件で試してもらい、詰まった箇所を追記|ここまでやって初めて「使える」と言えます
4. 30日パックでの実施範囲(ご提案)
上記1〜4を、ヒアリング・作成・利用テスト・保管ルールの設計まで含めて実施します。範囲・納期・金額は対象業務を確認後にお見積りします。
この見本を見て「自分でやれそう」と思ったら
やってください。それで解決するなら、そのほうが早くて安上がりです。質問リストも判断表の形式も、上に全部出しました。コラムにも作り方を公開しています。
外に頼む価値があるのは、こういう場合だと考えています。
- 身内だと本音が出ない|社内の人間が聞くと「見れば分かるやろ」で終わる質問が、外の人間には説明してもらえることがあります
- 通常業務で手が回らない|3時間半のヒアリングと、その後の文書化に手が空かない
- 当たり前すぎて質問が出てこない|社内の人は同じ前提を共有しているため、そこを疑う質問が出ません
よくある質問
この見本は、どこまで実際のものですか?
質問項目も判断の観点も、私が水処理・産業設備の技術営業として実務で使っていたものです。題材にした会社の状況は、複数の現場で見てきたものをもとに1社ぶんに構成しています。守秘義務があるため、特定企業の実名や実在の案件は掲載していません。
この見本を見て、自社でやってしまっても構いませんか?
構いません。むしろ、それで解決するならそのほうが早くて安上がりです。ツグアスに頼む価値があるのは、聞き出す相手が身内だと本音が出ない場合や、通常業務で手が回らない場合、社内の人間には当たり前すぎて質問が出てこない場合です。
5万円の診断では、何が手元に残りますか?
1業務ぶんの業務フローの見える化、「この人が抜けたら何が止まるか」の整理、仕組み化の優先順位、30日プランのご提案書の4点です(税別・約1週間)。診断のみで終了しても構いません。
うちの業務は特殊なので、この質問リストは合わないのでは?
質問リストは業務ごとに作り替えます。この見本は見積作成を題材にしたものですが、対象が現場作業でも事務でも、聞く順番(何のための業務か→通常の手順→判断の基準→例外→関係者→保管場所)は変わりません。特殊な業務ほど、判断が人に張りついている割合が高くなります。
このページで示したのは、診断でお渡しする成果物の形式と中身です。題材にした会社の状況は、筆者が水処理・産業設備の技術営業として複数の現場で見てきたものをもとに構成しています。守秘義務があるため、特定企業の実名や実在の案件は掲載していません。成果は対象業務やご協力いただける時間によって変わります。