「2025年問題」「2027年問題」「2025年の崖」——製造業の記事で並べて使われることがありますが、これらは別々の話で、指しているものが違います。混同したまま対策を考えると、打つ手がずれます。この記事ではまず言葉を整理し、そのうえで中小製造業が実際に見るべきものを示します。

3つの言葉を、出典で分ける

2025年問題 ── 団塊世代が全員75歳以上になる

1947〜1949年生まれの団塊世代が、2025年に全員75歳以上(後期高齢者)になります。医療・介護の需要増と、労働力人口の減少が同時に起きるという、社会全体の課題を指す言葉です。

製造業に固有の話ではありません。ただし人手の確保という点では当然影響します。

2025年の崖 ── 経済産業省が示したITの話

経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」で使われた表現です。老朽化した基幹システムを刷新できないまま2025年以降を迎えた場合の経済損失に警鐘を鳴らしたもので、技能継承ではなくITシステムの話です(経済産業省「DXレポート」2018年)。

2027年問題 ── 技能継承とは無関係

調べると、2027年問題として語られているのは主に次の2つです。

  • SAP ERP 6.0 の保守サポート終了(2027年末)——基幹システムを使っている企業の移行問題
  • 一般照明用蛍光灯の製造・輸出入の禁止(2027年末、水俣条約にもとづく)——照明のLED化

どちらも技能継承とは別のテーマです。技能継承の文脈で「2027年問題」が使われているのを見かけたら、何を指しているのか確認してください。

技能継承の文脈で本来語られたのは「2007年問題」

団塊世代の定年退職が始まることによる技能の喪失は、2007年問題として議論されました。実際には定年延長や再雇用によって退職が分散し、危機は先送りされた形になっています。

つまり、いま起きているのは「先送りされた分の期限が来ている」状態です。再雇用で残ってもらっていた世代が、いよいよ現場を離れる時期に入ります。この局面での進め方は定年再雇用とベテランの活用にまとめました。

年号ではなく、自社の人員構成を見る

「◯年問題」は、危機が社会全体でいつ来るかという話です。中小製造業にとって重要なのは、自社の中で誰がいつ抜けるかです。

次の2つを出せば、年号に関係なく優先順位が決まります。

  1. あと5年以内に抜ける可能性のある人を挙げる:定年、再雇用の期限、健康上の事情。役職ではなく個人で見ます。
  2. その人が持っている「代わりのいない業務」を書き出す:スキルマップで、業務ごとに「1人でできる人が何人いるか」を数えます。見るのは人の行ではなく、業務の列です。

ここで「1人しかいない」業務が出てきたら、それが自社にとっての期限です。社会全体の年号より、こちらのほうがはるかに切実です。

統計を使うときの注意

「2025年問題」を語る記事には、多くの統計が並びます。使うときは次を確認してください。

  • いつの調査か:数年前の数字が最新のように引用されていることがあります
  • 何を聞いた調査か:「技能継承に問題がある」と「人手が足りない」は別の質問です
  • 対象は誰か:全産業の数字を製造業の数字として使っている記事があります

このサイトに載せている統計も、調査年と出典を各ページに明記しています。数字を根拠に社内を説得するなら、出典まで確認してから使ってください。

まとめ

  • 2025年問題=団塊世代が全員75歳以上になる社会全体の課題。製造業固有の話ではない。
  • 2025年の崖=経済産業省DXレポート(2018年)のITシステムの話。技能継承とは別。
  • 2027年問題=SAP ERPの保守終了と蛍光灯の製造禁止。技能継承とは無関係。
  • 技能継承の文脈で本来語られたのは2007年問題。定年延長と再雇用で先送りされ、いまその期限が来ている。
  • 年号ではなく、自社で「あと5年以内に抜ける人」と「その人しかできない業務」を出すほうが早い。

「誰が抜けたら何が止まるのか」を出す最初の作業は、業務の一覧づくりです。書き出す項目と粒度は業務の棚卸しのやり方にまとめています。