業務の標準化とは──誰がやっても同じ結果になるようにすること
業務の標準化とは、誰がやっても同じ結果になるように、やり方と判断の基準を決めて共有することです。
「この作業はあの人に聞かないと分からない」「同じ依頼なのに、担当者によって仕上がりが違う」——中小製造業の現場に、こうした場面は珍しくありません。業務の標準化は、この状態を人の頑張りではなく仕組みで直すための考え方です。
押さえる点は2つあります。決めるのは「やり方」だけでなく「判断の基準」まで、という点。そして、決めて終わりではなく、共有して誰でも見られる状態にするところまでが標準化だという点です。手順を紙に書いても、書いた本人の机の中にあるだけでは、標準化したとは言えません。
標準化は、属人化の対義語ではなく「解毒剤」
属人化(その人にしか分からない・できない状態)の反対語が標準化だ、と説明されることがあります。間違いではありませんが、実務では標準化は属人化の解毒剤と捉えたほうが進めやすくなります。
仕事は放っておくと必ず属人化します。忙しい現場では、一番できる人がやるのが一番速いからです。つまり属人化は誰かの怠慢ではなく自然現象で、人を責めても直りません。直すには、属人化した業務を一つずつ標準化していくしかない——この順番で捉えると、「属人化してしまった」と過去を責めるのではなく、「まだ標準化していない」という次の一手に目が向きます。属人化そのものの意味と、放置したときに何が起きるかは属人化とは?中小製造業での意味と、解消の進め方で詳しく書きました。
実際、厚生労働省の調査では、製造業で技能継承に問題があるとした事業所は54.7%でした(平成28年度能力開発基本調査。2016年度の調査です)。半数を超える事業所が技能の継承に問題を抱えており、標準化はその出口にあたります。
標準化の対象は「手順」と「判断」の2つ
標準化というと手順書作りを思い浮かべる方が多いのですが、対象は2つあります。
- 手順|何を、どの順番で、どうやるか。書き出しやすく、多くの会社で既に何かしらの形で残っています
- 判断|進めてよいか、止めるか、誰かに相談するかの分かれ目。「◯◯ならそのまま進める、△△なら確認する」という条件です
失敗する標準化は、多くの場合、判断が抜けています。手順どおりに進めても、途中で「今回はいつもと違うが、このまま進めてよいのか」という場面が必ず来ます。そこで結局ベテランに聞くなら、業務はその人に張りついたままです。判断を条件の形で書き出す具体的な方法は「判断表」の作り方にまとめています。
業務標準化の進め方4ステップ
順番はこの4つです。どれかを飛ばすと、飛ばしたところから形骸化します。
- 1業務に絞る|全業務を一度に標準化しようとすると、範囲が広すぎて必ず止まります。「その人が急に休むと一番困る業務はどれか」で1つ選びます
- 手順と判断を聞き出す|本人に書かせるのではなく、聞き役が質問して引き出します。特に「例外が起きたときどう判断したか」「なぜその順番なのか」を必ず聞きます。本人にとっては当たり前すぎて、自分では書けない部分だからです
- 形にする|手順書・判断表・チェックリストなど、業務に合った形に落とします。文章にこだわる必要はなく、写真や動画のほうが伝わる作業もあります。文書に落とすときの手順は業務マニュアルの作り方で解説しています
- 続く状態にする|置き場所を1か所に決め、いつ・誰が見直すかを決めます。作って終わりの標準は、実態とずれた瞬間に使われなくなります
私は現在、営業組織で、新しく入った人が独力で立ち上がる仕組み(オンボーディング)の設計を担当しています。対象を絞り、判断まで聞き出し、形にして、見直しが続くようにする——業務の種類が変わっても、この順番は変わらないと考えています。 標準化を1業務ずつ進める段取りは業務改善の進め方にまとめました。
「全部揃える」「工夫を殺す」──標準化のよくある誤解
- 全部の業務を揃える話ではない|標準化の対象は、止まると困る業務だけで十分です。頻度が低く、誰がやっても結果が大きく変わらない業務まで揃えるのは、手間に見合いません
- 創意工夫を殺す話ではない|標準は「現時点でいちばん良いやり方」の共有であって、永久に固定するものではありません。より良いやり方が見つかったら、標準の側を書き換えます。むしろ標準という比べる相手があるからこそ、どの工夫が効いたのかを全員で確かめられる——標準がないままだと、工夫は個人の中に留まり、また属人化に戻ります
まとめ
- 業務の標準化とは、誰がやっても同じ結果になるように、やり方と判断の基準を決めて共有すること。
- 標準化は属人化の対義語ではなく解毒剤。属人化は自然現象なので、人を責めるより標準化を進める。
- 対象は「手順」と「判断」の2つ。判断が抜けると、結局ベテランに聞く状態に戻る。
- 進め方は4ステップ:1業務に絞る→手順と判断を聞き出す→形にする→続く状態にする。
- 全業務を揃える必要はなく、創意工夫を殺すものでもない。標準は更新される前提の「現時点の最善」。