属人化とは、「その人にしか分からない・できない」状態のこと

属人化(ぞくじんか)とは、ある業務の進め方や判断が特定の人の経験・記憶の中だけにあり、その人がいないと仕事が回らなくなる状態を指します。「この件はAさんに聞かないと分からない」「あの機械はBさんしか触れない」——中小製造業の現場で、よく聞く言葉ではないでしょうか。

属人化そのものは、悪いことばかりではありません。熟練の技術や、長年の顧客との信頼は、その人がいるからこそ成り立っています。問題になるのは、それが「その人だけ」で止まっていて、会社の資産として残っていないときです。

なぜ属人化が「経営リスク」になるのか

担当者が退職・入院・異動した瞬間に、会社は同じ品質で仕事を回せなくなります。これは大げさな話ではありません。近年の公的データは、その深刻さを示しています。退職時だけでなく、日常的に出ている損まで含めた整理は属人化のリスク5つにまとめました。

  • 2024年に休廃業・解散した企業は6万2600件超と過去最多。しかもその約51.5%は黒字でした(東京商工リサーチ)。業績ではなく「続けられない理由」で会社が消えています。
  • 全国の後継者不在率は52.1%(帝国データバンク)。技術や顧客が特定の人に張りついたまま、その人が引退の年齢に近づいています。

つまり属人化は、「担当者が忙しい」という日々の不便にとどまらず、会社が事業を続けられるかどうかに直結する問題になりつつあります。

属人化が起きやすい3つの業務

中小製造業で、特に属人化しやすいのは次のような業務です。

  1. 現場・設備の対応:段取り、品質確認、異音やトラブル時に「どこを最初に見るか」という判断。
  2. 営業・見積:顧客ごとの経緯や優先順位、見積前に確認すべき項目、技術部門へ相談する条件。
  3. バックオフィス:受発注、請求、申請の処理順や締日、確認先。

共通するのは、「手順」ではなく「判断」が人の頭の中にしかないという点です。手順書はあっても、「なぜそう判断するのか」「例外時にどこを見るのか」が抜けていると、次の人は同じようには動けません。

属人化を解消する進め方(現実的な4ステップ)

属人化の解消は、一気に全部をやろうとすると必ず頓挫します。通常業務が優先され、整理する時間が取れないからです。次の順番で、一つの業務に絞って進めるのが現実的です。

  1. 止まると困る業務を一つ選ぶ:退職・休職・異動が起きたときに、顧客・生産・お金へ影響が大きい業務から優先順位を決めます。
  2. 頭の中を聞き出す:担当者へのヒアリングと実際の作業確認で、通常手順だけでなく「判断の理由」と「例外対応」を記録します。ここが属人化解消の核心です。
  3. 使える形に変換する:文章だけにせず、写真・動画・チェックリスト・判断表など、その業務に合う形にします。
  4. 続く状態にする:保管場所・名前の付け方・更新担当を決めます。作って終わりにせず、社内だけで回る状態にします。

まとめ

  • 属人化とは「その人にしか分からない・できない」状態のこと。
  • 担当者が抜けた瞬間に品質が落ち、黒字でも事業が続けられないリスクにつながる。
  • 問題は「手順」ではなく「判断」が人の頭にしかないこと。
  • 解消は、止まると困る一業務に絞り、判断まで聞き出して使える形に残すのが現実的。