同じ質問が、毎回同じ人に来る

「これどうするんでしたっけ」「あの件、誰に聞けばいいですか」——中小製造業でよく起きるのは、特定のベテランや事務担当に質問が集中する状態です。聞かれる側は本来の仕事が止まり、聞く側は待たされる。どちらの時間も減っていきます。

原因は単純で、答えがその人の頭の中にしかないからです。書いてあればその人に聞く必要はありません。社内FAQは、この「聞かないと分からない」を減らすための道具です。

ただし、質問と回答を並べただけのファイルを作っても、まず使われません。使われるものと使われないものの差は、次の3つで決まります。

  • どの質問を載せるか
  • どこに置くか
  • 誰がいつ更新するか

載せる質問の選び方

載せるべき質問

  • 実際に2回以上聞かれた質問|これが基本です。1回しか出ていない質問は、まだ載せなくて構いません
  • 手順書に書きにくい「例外」の質問|「いつもと違う数量が来たらどうするか」「先方が急ぎと言ってきたらどこまで対応するか」。手順書は正常系を書くものなので、例外はFAQのほうが向いています
  • 担当者しか知らない「どこにあるか」|書式はどのフォルダか、あの取引先の図面はどこか。探す時間はそのまま損失です
  • やってはいけないことと、その理由|過去に事故になった操作、送ってはいけない相手。理由を書かないと守られません

載せなくていい質問

  • 想定で作った質問|「たぶんこれを聞かれるだろう」で作ったものは、実際には引かれません
  • 手順そのもの|工程が5つも6つもある作業はFAQに向きません。手順書やマニュアルにして、FAQからはそこへリンクします
  • すぐ変わる情報|今月の担当割り、今期の価格。更新が追いつかず、古い情報で事故を起こします

作り方(4ステップ)

  1. 1〜2週間、質問をそのまま書き留める|聞かれた側が、聞かれた言葉のまま記録します。要約しないでください。「相手が使った言葉」で書いてあるほうが、後で検索に引っかかります
  2. 2回以上出たものだけ残す|だいたい10〜20件になります。この数で十分です。最初から100件作ろうとすると完成しません
  3. 回答は3行以内で書く|長い説明が要るものは、それはFAQではなくマニュアルの領分です。FAQには結論と、詳しい手順へのリンクだけを置きます
  4. 知らない人に引いてもらう|作った本人は探せて当たり前です。その業務を知らない人に「これを調べて」と頼み、見つけられなかった質問はタイトルを直します。人が実際に使う言葉になっているかは、これでしか分かりません

続く状態にする

社内FAQがいちばん多く失敗するのは、作った直後ではなく3か月後です。更新されず、古い情報が混ざり、誰も信じなくなって使われなくなります。

防ぐには、作る時点で次の3つを決めておきます。

  • 置き場所は1か所だけ|全員が毎日開いているところに置きます。新しいツールを入れるより、いまのチャットや共有フォルダのほうが定着します(情報共有が定着しない4つの理由)
  • 更新のきっかけを決める|おすすめは「質問が来たら、回答した人がその場で1件追記する」です。使うほど育ちます。「気づいた人が直す」は誰も直しません
  • 見直す日を決める|半年に1回、全件に目を通す日をカレンダーに入れます。古い項目は消す。消す判断も決めておくのが大事です

社内FAQと、マニュアル・判断表の使い分け

3つは役割が違います。全部をFAQに詰め込もうとすると失敗します。

  • 社内FAQ|困った1点だけをすぐ引く。3行で答えが出るもの
  • マニュアル・手順書|作業の流れを最初から最後まで追う
  • 判断表|進める・止める・相談するの分岐条件を決める

人は困ったときにマニュアルを最初から読みません。まずFAQを引き、足りなければマニュアルへ、判断に迷えば判断表へ。この3段構えになっていると、聞かなくても進める割合が上がります。

まとめ

  • 載せるのは実際に2回以上聞かれた質問だけ。想定で作ったFAQは使われない。
  • 聞かれた言葉のまま記録する。要約すると検索で見つからなくなる。
  • 回答は3行以内。長くなるものはマニュアルへリンクする。
  • 知らない人に引いてもらい、見つけられなかった項目はタイトルを直す。
  • 置き場所は1か所、更新は「回答した人がその場で追記」、半年に1回見直す日を決める。