「黒字なのに畳む」が、もう例外ではない
2024年、日本で休廃業・解散した企業は6万2600件を超えました。統計開始以来はじめて6万件を超え、過去最多を更新しています(東京商工リサーチ)。
驚くのはその中身です。廃業した企業の直前期の決算を見ると、約51.5%が黒字でした。つまり、赤字で力尽きたのではなく、利益は出ていたのに会社をたたんだケースが、半分以上を占めています。
なぜ、黒字なのに終わるのか。
最大の理由は「継ぐ人」と「継げる形」がないこと
一つは後継者の不在です。全国の後継者不在率は52.1%(帝国データバンク)。半数以上の会社で「次にバトンを渡す人が決まっていない」状態が続いています。後継者が見つからずに行き詰まる「後継者難倒産」は2024年に462件と、5年連続で過去最多を更新しました。
背景には経営者の高齢化があります。休廃業した会社の社長の平均年齢は72.6歳、70代以上が67.9%を占めます。長年、現場を回してきたベテランが、そのまま引退の年齢に達しているのです。
そしてもう一つ、見落とされがちな理由があります。「継ぐ人はいても、継げる形になっていない」という問題です。
後継者難倒産をもっとも多く出している業種は建設業で、全体の25.0%。理由の一つとして「技術伝承の難しさ」が指摘されています(帝国データバンク)。これは製造業や産業設備の会社にも、そのまま当てはまります。
「技術がある」と「技術が残る」は、まったく別の話
現場を長く見てきた立場から言うと、多くの中小製造業では、技術やノウハウが特定の人の頭の中にあります。
- この機械の異音が出たとき、どこを最初に見るか
- この顧客は価格より納期を優先する、という判断の勘どころ
- 見積の前に、何をどの順で確認すべきか
こうした「判断」は、手順書には書かれていません。ベテランがいる間は問題が表面化しませんが、その人が退職・入院・異動した瞬間、会社は同じ品質で仕事を回せなくなります。
黒字廃業の多くは、業績の問題ではなく、この「人に張りついた技術を、会社に残せなかった」問題の結果でもあるのです。
技術を「会社の資産」に変える3ステップ
技術継承は、ベテランの退職が決まってから慌てて始めても間に合いません。そして、作業手順を書き出すだけでも終わりません。次の3つを分けて考えると進めやすくなります。
- 見える化する:止まると困る業務を一つ選び、担当者への聞き取りと現場・商談の確認で、手順と「判断の理由」を洗い出す。
- 使える形にする:文章だけにせず、写真・動画・チェックリスト・判断表など、その業務に合う形へ変換する。例外時にどこを見るかまで残す。
- 続く状態にする:保管場所・名前の付け方・更新担当を決める。作って終わりではなく、社内だけで回る状態にする。
大切なのは、全部を一度にやろうとしないこと。まず「この人が抜けたら本当に困る一業務」に絞る。ここが動けば、他の業務にも同じやり方を広げられます。 事業承継の準備と現場の引き継ぎの関係は事業承継と技術承継の違いで扱っています。
まとめ
- 2024年の廃業は過去最多で、その約半分は黒字だった。
- 原因の多くは後継者不足と、技術が人に張りついたままだったこと。
- 「技術がある」と「技術が残る」は別。判断まで会社に残す準備が要る。
- まずは止まると困る一業務から、見える化 → 使える形 → 続く状態へ。