引き継ぎ書のテンプレートを探している方の多くは、「何を書けばいいのか」の一覧が欲しい状態だと思います。この記事では、実際に使う項目をそのまま書き出します。ただし先に一点だけ——テンプレートを埋めるだけでは引き継ぎは終わりません。その理由と、埋めたあとに何をするかまで含めて解説します。
引き継ぎ書に入れる9項目
上から順に、書きやすい並びにしてあります。分類から入らず、この順に埋めてください。6項目に絞った簡易版は引き継ぎマニュアルの作り方にあります。
- 業務の名前と、目的:何のためにやっている仕事か。目的が分かると、後任が状況に応じて判断できます。「言われたからやる」状態を防ぐ唯一の項目です。
- 発生のきっかけと頻度:何が起きたら始まるか(受注が入ったら/毎月末/客先から連絡が来たら)。頻度も書きます。
- 関係する人・部署・社外:誰に確認し、誰に渡すか。社外の担当者名と連絡先も。ここが空白だと、後任は最初の1回で必ず詰まります。
- 作業の流れ:10〜20工程が目安。細かい操作は別紙にして、ここには全体の流れだけを書きます。
- 判断が要る場面と、その基準:最重要の項目です。「どういうときに進める/止める/相談するか」。詳しくは判断表の作り方を参照してください。
- 例外・イレギュラーの対応:これまでに実際に起きたトラブルと、そのときどうしたか。過去の実例をそのまま書くのが最も役に立ちます。
- 使うファイル・システム・道具の場所:保存場所のパス、システム名、ID の管理場所(パスワードそのものは書かず、どこで管理しているかを書きます)。
- 取引先ごとの例外的な約束:「A社は必ず先に電話」「B社は請求書2部」など。書かれていない慣習がここに集まります。営業職の引き継ぎでは、ここが最も引き継がれない部分です(営業マニュアルの作り方)。
- 年に数回しか発生しない作業:年度切り替え、棚卸し、契約更新、定期点検。後任が半年後に困る項目です。忘れずに。
この順番にする理由
引き継ぐ本人は、目的 → きっかけ → 流れの順なら自然に話せます。逆に「分類してから書いてください」と言うと、分類を考える段階で手が止まります。
また、最初に目的を書いてもらうと、その後の記述の精度が上がります。何のためかを言語化した人は、判断の説明も出てきやすくなります。
テンプレートで拾えないもの
ここが本題です。項目があっても、次の3つは高い確率で書かれません。
- 本人が「当たり前」だと思っていること:長くやっている人ほど、無意識にやっている工程が増えます。本人には見えていないので、項目があっても空欄のままです。
- 判断の理由:「経験で分かる」「見たら分かる」で終わりがちです。ここを掘るには、実際の事例を出して「このとき、なぜそうしたのか」と聞く必要があります。
- 頻度が低い作業:書いている時点で発生していないので、思い出されません。「先月やったことのうち、予定外だったものは?」と聞くと出てきます。
だから、テンプレートを埋めてもらったあとに第三者が質問する工程が要ります。埋まった内容を見ながら「ここで迷うことはないですか」「これは誰かに聞くことがありますか」と聞くだけで、抜けが見つかります。
埋めたあとの検証
引き継ぎ書ができたら、その業務を知らない人に読ませて、実際にやってもらってください。これが唯一の検品方法です。
本人と、その業務を知っている上司だけで確認すると、両方が答えを知っているので抜けに気づけません。詰まった箇所が書き漏らしです。そこを書き足せば、引き継ぎ書は一段階使えるものになります。
時間がないときの優先順位
全項目を埋める時間がない場合、上から順ではなく、5番(判断)・8番(取引先ごとの例外)・9番(頻度の低い作業)を優先してください。
4番の作業の流れは、後任が実際に触れば分かることが多い項目です。一方でこの3つは、触る機会がないまま時間が過ぎ、必要になった日に誰も分かりません。期間が短いほど、頻度の低いものを優先する——直感に反しますが、これが正しい順番です。期間別の進め方は退職時の引き継ぎ期間にまとめています。
まとめ
- 引き継ぎ書の項目は9つ。目的 → きっかけ → 関係者 → 流れ → 判断 → 例外 → 道具の場所 → 取引先の約束 → 年数回の作業。
- 分類から入らず、本人が話しやすい順に並べる。
- テンプレートでは、本人の「当たり前」・判断の理由・頻度の低い作業が拾えない。第三者の質問で補う。
- 検証は、その業務を知らない人に読ませて実際にやってもらう。
- 時間がないときは、判断・取引先ごとの例外・年数回の作業を優先する。
ツグアスの診断では、この聞き取りを第三者として行います。実際にお渡しするものの見本(質問リスト26問・判断表・報告書)を公開しているので、中身を見てからご判断ください。