人手不足は「採用の問題」だけではない
製造業の人手不足は、年々深刻になっています。就業者数は長期的に減り続け、現場ではベテランの高齢化と若手の不足が同時に進んでいます(経済産業省「ものづくり白書」)。求人を出しても人が集まらない、採用してもすぐ辞めてしまう——そんな声を、中小製造業の現場でよく聞きます。
ただ、人手不足を「採用の問題」とだけ捉えると、対策を見誤ります。もう一つ、根の深い問題があるからです。それは「技術が人に張りついたまま、会社に残っていない」という問題です。
「ベテランの退職」が現場を止める
経済産業省の「ものづくり白書」でも、人手不足の要因として「指導者となるベテラン人材の退職」が繰り返し指摘されています。人数の問題だけでなく、技術を伝える側がいなくなることが、現場を止めるのです。
そして、その先で起きているのが「続けられない会社」の増加です。
- 2024年の休廃業・解散は6万2600件超と過去最多。しかも約51.5%は黒字でした(東京商工リサーチ)。
- 全国の後継者不在率は52.1%(帝国データバンク)。技術を持つ人が引退の年齢に近づいています。
採用がすぐには解決しない今だからこそ、「今いる人の技術を、会社に残す」ことの価値が上がっています。人が減っても、技術と判断が仕組みとして残っていれば、少ない人数でも同じ品質で回せるからです。
人が減る前提で、何をすべきか
「人が増えない前提」で守りを固めるなら、やることは3つです。
- 止まると困る業務を特定する:その人が抜けたら顧客・生産・お金に影響が大きい業務を洗い出し、優先順位をつける。
- ベテランの「判断」を引き出して残す:手順だけでなく、「なぜそう判断するか」「例外時にどこを見るか」を記録する。ここが技能継承の核心。
- 少人数でも回る形にする:写真・動画・チェックリスト・判断表にして、新人や他部署の人でも一次対応できるようにする。1業務あたり2人が動ける状態にする進め方は多能工化の進め方に。
大切なのは、ベテランが元気なうちに始めること。退職が決まってからでは、聞き出す時間が足りません。
まとめ
- 製造業の人手不足は、採用難だけでなく「ベテラン退職による技術の喪失」も大きな要因。
- 黒字でも続けられず廃業する会社が過去最多。技術が人に張りついたままが一因。
- 人が増えない前提なら、今いる人の技術と判断を会社に残すことが最優先。
- 止まると困る一業務から、ベテランが元気なうちに始める。