「あの案件どうなってる?」と聞かれて、担当者本人しか答えられない——これが案件管理の属人化です。受注に至るまでの経緯が個人の頭と手帳の中にあり、会社には残りません。この記事では、ツールを入れる前にやるべきことと、実際に続く最小限の記録の形を整理します。

案件管理が属人化すると、何が起きるか

  • 本人が休むと止まる:顧客から連絡が来ても、誰も状況を答えられません。
  • 見込みが読めない:「たぶん決まると思います」の集合体では、生産や仕入れの計画が立ちません。
  • 失注の理由が蓄積しない:同じ負け方を繰り返します。
  • 引き継ぎに時間がかかる:退職時、経緯を聞き出すところから始めることになります。
  • 助けられない:詰まっている案件が見えないので、周りが手を出せません。

最後の1つは見落とされがちですが重要です。見えていない案件は、支援のしようがありません。

ツールを入れる前に決める3つ

ツール導入がうまくいかない会社の多くは、この3つを決めずに導入しています。これはツールでは決められません。

  1. 何を残すか:全項目ではなく、最小限を決めます。おすすめは3行——決まったこと/決まらなかったこと/次の一手。
  2. いつ残すか:訪問や電話の直後です。「週末にまとめて」は、忙しい週に消えます。
  3. 誰が読むか:読む人がいない記録は続きません。週1回、5分でいいので誰かが見る場を作ってください。見られていることが、書く動機になります。

最小限の記録:3行だけ

項目を増やすほど入力されなくなります。まずはこれだけで始めてください。

  • 決まったこと:「仕様は◯◯で確定。数量は50」
  • 決まらなかったこと:「納期は先方の工事日程待ち。返事は来週」
  • 次の一手:「金曜に図面を送る。返事が無ければ火曜に電話」

この3行があれば、本人が休んでも他の人が状況を説明でき、次の動きも分かります。詳細な議事録は要りません。

案件の状態を、共通の言葉にする

「見込みあり」「ほぼ決まり」「検討中」——人によって意味が違う言葉を使っていると、集計しても意味がありません。行動で定義してください。

  • 引合:問い合わせを受けた。まだ要件が固まっていない
  • 見積提出:金額を出した。返事待ち
  • 最終調整:先方が社内の承認手続きに入っていると確認できた
  • 受注/失注:結果が出た

重要なのは「最終調整」の定義です。営業の感触ではなく、先方の状態で決める——ここを揃えると、見込みの精度が一段上がります。

失注こそ残す

失注の理由は、次の提案に最も効く情報です。ところが報告したくない情報なので、放っておくと最も残りません。

残す形はこれで十分です。「負けた理由を1行、責めない」。

  • 「価格。他社が◯割安かった」
  • 「納期。3週間の要求に応えられず」
  • 「技術。◯◯の実績を求められた」
  • 「不明。連絡が取れなくなった」

「不明」も立派な情報です。不明が多いなら、追いかけ方に問題があります。理由を問い詰める運用にすると、途端に「価格」ばかりになり、実態が見えなくなります。

紙とExcelで十分か

件数が月に数十件までなら、Excel1枚で回ります。ツールが必要になるのは、次のような場合です。

  • 複数人が同時に編集して、版が分かれてしまう
  • 過去の案件を条件で検索したい
  • 案件と見積・受注のデータをつなげたい

Excelで回らないものは、ツールを入れても回りません。まず3行の記録を1か月続けてから、足りないものを見て選んでください。この順番を逆にすると、高機能なツールに何も入っていない状態になります。

まとめ

  • 案件管理の属人化は、本人が休むと止まる・見込みが読めない・失注が蓄積しない・引き継げない・助けられない、を招く。
  • ツールを入れる前に、何を・いつ・誰が読むかを決める。ツールでは決められない。
  • 記録は3行から。決まったこと/決まらなかったこと/次の一手。
  • 案件の状態は営業の感触ではなく、先方の状態で定義する。
  • 失注理由を1行、責めない形で残す。「不明」も情報。
  • Excelで回らないものは、ツールでも回らない。

営業の記録が個人に張りついている状態からの整理は、営業の属人化はなぜ起きるかもあわせてご覧ください。ご相談は15分・無料から。